プロローグ(Aug 25,'00)

 今年の春の出張時にいつも利用する東京のショップでこのキットを見かけていたが、お値段が五万円以上ということで見てるだけだった。これはUボートの艦橋部分だけを切り取ったモデルだが、十万ちょっとで別メーカーが1/35全体モデルを出していたし、フィギュアが付属していると言ってもこのお値段ではポケットマネーorお小遣いの域を越えていて突発性失神症候群が発症するレベルではなかった。ある日同僚がいつも利用しているこのキットのメーカーのページを覗いてみると、直販のお値段が225.38ユーロとなっている。円に換算すると国内流通価格の半額以下だし、ここからは海外通販でちゃんと届く現場を見ているのでEメールで注文してみた。普段なら一週間以内に届くこともあるようだが、夏休みの時期だったためか少し遅く到着までに三週間程かかった。ネット環境を使えるモデラーはこれを利用しない手はない。アメリカの比較的安いショップでも419.45ドルで出しているし、国内流通価格なら2セット買えるので映画「Das Boot」の洋上でのすれ違いシーンが再現できてしまう。ショップが暴利を得ているはずはないだろうから、輸入経路によっては中間マージンがかなりかかるのだろう。

 箱の中はレジン製の船体の一部と艦橋、ホワイトメタル製の細部部品とフィギュア、エッチングの甲板の他、ドライデカール、印刷された旗、説明書が付属している。説明書はスペイン語、英語、フランス語、ドイツ語の他に、なんと日本語の説明も書かれている。翻訳ソフト+直訳という感じで日本人が書いた日本語ではない。例えばフラットブラックは某香港メーカーの「フや消しブラソワ」のようにフランスなまりではなく「艶無黒色」となっていて読んで字の如くである。「写し絵」というのが最初わからなかったが、よく考えるとデカールのことだと分かる。レジン製の船体はホントの一部で艦橋がかかる部分だけ、しかも完全なウォーターラインモデルで戦車より少し大きめ位の大きさしかなくて日本の住宅事情にはピッタリである。

 ウォーターラインモデルなので海面を作りたいが、船体前後を切り取ったモデルなのでベースの大きさを先に決めなければならない。船体の大きさは31.5×15cm程度で、ホームセンターに売っていたやや短めの30×21cmのデコパージュを使うことにした。底板に木材で組んだ側板を載せ、中に上げ底の板を入れる構成にする。

 情景モデルは空間を切り取ったものだが、キットのように対象を水平に置くよりは斜めにした方が自然な感じになる。そのためにやや短いベースを選択し、船体の前後を切り取ることにした。船体の右後端は気泡のために大きく欠損している。Uボートの向きはパッケージ写真のように前方を手前に斜めにしたいので、パテ埋めしなければならないと思っていた。

 よく考えたら左右はどちらを前にしてもよいので、右を前にして気泡部分を切除する方向にした。エクザクトノコで垂直に切除して断面にプラ版を貼り付け成形した。





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